書いてるだけで丸裸

とはいえパブリックであることは忘れずに生きたい

20240322 / 夢に引かれて博物館詣でした日

 

夢を見た。なんとなく朝が来たのはわかっていて、今日は浅い眠りでもとりあえずゴロゴロ布団におれそうやな、なんてうとうとしていた最中に。

 

実家近く、幼馴染みというには少し距離があった子の家の角を、駅方向に曲がった先へ歩いていた。おかっぱボブが大層似合う、小柄で、ぱっちりとした目が生き生きとしている友達と一緒だ。彼女が「あ」と言った先を見ると、更地になった角の家から1軒奥、3階建てのビルの建物2階が何かテーマのある雑貨屋の気配。外付けの廊下まではみ出した商品と下からでも見えるポップ。私はその店のことを知っていて、見ていく? と足を向けた。

店内は雑然としていたけれど、しかし木の多い内装でどこか落ち着く雰囲気があった。数部屋ある店内を楽しくうろうろする。そのうち彼女がショーケースに入っているお皿について店主に尋ねると、目利きだね、なんて笑いながらそれを取り出した店主が色々と説明をしてくれた。裏側まで模様の入った長角皿だった。

「見たいものは見たいって言わないとね」

彼女が私を見上げながら朗らかにキッパリとそう言った瞬間、「美術館とかに行こ!」と雷に打たれたように目が覚めた。せやったわ。関東平野は景色はアレやけど、東京には美術館博物館がたくさんあるんやった。

彼女のような友達は実在しないし町の様子もまるで違ったけれど、昨日一昨日の倦んだ気持ちから一気に出かける気力を湧き上がらせてくれた夢だった。

 

カーテンを開ければ晴れ、体もすいすい動く。朗読、引き続き『台所をひらく』。読書は今日から『脳の外で考える』。初っ端から腕のいいトレーダーの話が出てきて、ここ数日の己の行動と重なるものがあり苦笑。しかし興味深い。スキャン瞑想取り入れたいな。株の話が出たついでにいくつか指値で入れておく。

朝食、野菜の薄味コンソメスープに焼き餅を入れた洋風雑煮と推しソーセージ屋のエゾシカのソーセージ。お雑煮にするならもうちょっと濃い味にしなきゃな。

日記更新しシャワーを浴び、久々にしっかり目に顔を作る。普段あまり作らず慣れないけれど、「眉が大事」という意識で頑張ったら割とうまくできてにんまり。リップ兼チーク(口紅をそのままちょっと頬に叩いてチークにしてる)が秋冬の濃い深い色味なのはご愛嬌。これも長く使ってるしそろそろ新しいやつ、欲を言えば春夏と秋冬で1本ずつ欲しいけれど、そんなに使わんし迷うな〜、とか思いながら出発。

 

今日はランチも外ですると決めていたので、JR上野駅で物色。構内のecuteをぶらぶら歩き、奥の特急ホームの入り口を懐かしみつつ寿司じゃないし蕎麦じゃないしラーメンでもないな、と思っていた私の目に飛び込んできた〈洋食や三代目 たいめいけん〉。これや。オムライス、作れなくはないけれどソースをかけるタイプは家では絶対作らなんし、食べたい感じある!

席に着くと飛び込んできた季節のおすすめメニューは「春色 サーモンクリームオムライス」。クリームソース、いい。家では作ったことない。他にもクリームソースのメニューあるかな、とチラ見し、なさそうだったのでこちらを頼む。

積読唯一の文庫本だった『日本百名山』を読み始めつつ、しばらく待ってお出ましになったオムライスは上に載っているサーモンとイクラがメニュー写真より盛り盛り大サービス。1.5倍は堅い量で嬉しくなる。お味も目新しい。ホワイトソースだけだと単調になるところ、イクラとオリーブオイルがアクセントになって口の中に広がるたびに笑んでしまう。おいし〜い!

本日の初号ホームラン。胡椒は使わずだったけど確かに終盤かけても美味しかったかも

隣の席には同年代か少し上の男性。「あのさ、えーと、これはハーフにできます、か」等々自分の意思を押し出しつつ大人であることを思い出したか丁寧さもギリ忘れず。お店の人も「そちらはご用意がなく……っ申し訳ありません、ハーフにする場合通常のお値段と同じになります」とややテンパりながらもギリ丁寧さを忘れず。お互いイレギュラーに対しギリギリでも丁寧に対応していくところにちょっぴり胸が熱くなった。努力に基づく丁寧さは世界を少し居心地の良いものにしてくれる、ことが多い。


いつぶりかわからないぐらい久々の上野、薄々察してはいたけれど、JRの駅近辺はしっかり再整備されて変わっていた。特に駅から横断歩道を渡らなくてよくなっていたのはびっくり。歩きやすくて最高。

てこてこ歩いて東京国立博物館へ。一応特別展の中尊寺金色堂展付きのチケットを買うも、特別展会場がべらぼうに混みすぎていて早々に退散。もうちょっと仏像や調度品の点数をちゃんと調べたほうが良かったな〜。

人が少なく見やすい常設展の方へ回る。2階が歴史の流れに沿った展示のようなのでそちらから。歩きながら、階段や天井の造作にうっとり。やっぱり本館はどこも手が込んでいて美しい。なぜ現代ではこういう公共の建物をつくらないのだろう? 10年に1回ぐらい、人間国宝の人たちに依頼して建築・美術振興がてらやればいいのに、と思ったものの、それだけ国も人の心も貧しくなったんだろうな〜。それ以上深く考えるのは今じゃないのでやめた。

縄文時代から順に回る中、元とうらぶ民としてはやはり武士の時代の刀の展示に足が長く止まる。「太刀 青江次吉」の太くどっしりした力強い体と、そこにごく薄く、すっと切れ長に入っている刃文がめちゃくちゃ好み。華やかな刃文よりこういった細く入っているものの方が好きなんだな、という自覚はあったけれど、「細直刃」と呼ぶらしい。細直刃でも「包丁やないかい」と思ってしまうものもある中、この青江次吉は太さと反りで100点満点。なんでもかの八台将軍吉宗が即位した天皇に贈った品だそうで、拵えも見事。鞘の好みも「梨地」と呼ぶこともわかったぞ! 好きなものに対する語彙が増えて超楽しい。

工芸では螺鈿のものが見たかったのだけれど、今回は蒔絵や七宝が主でほぼなかったのは残念。時期によって展示替えしているはずなので、また次回の楽しみにする。やまと絵、水墨画、装束、近代の蝋型の緻密な銅像なども見つつ平成館の考古展示にも足を延ばしたけれど、埴輪を並べて展示してあるところが遠目に見ても可愛くて最高だった。

夜間延長開館してくれているおかげでゆっくり見学し、いい感じに日が暮れる頃に退館。特別展も帰る頃にはすっかり空いていたし、次来るときも休みの金曜にしたいな。

東洋館から夕暮れの本館(右)と表慶館(左)を望む

 

上野まで来たし、〈蕪木〉までコーヒー買いに行けそうじゃない? あっ、あとマルイの〈有隣堂〉も覗いちゃう? と欲を出してアメ横方面へ。そのまま高架を潜ってまずはマルイへ。エスカレーターで地下に下り、今日いいのがあったら記念に買おうと思っていた栞を探す。東博の栞は金ピカかクリップか、ページの上に革で挟むタイプかで好みではなかったのだ。ページの間に挟む、あまり厚すぎない金ピカじゃないやつが欲しい。

雑貨コーナーにはなく、諦めてエスカレーターに向かいかけたその時、現れたのはYouTubeコーナー。通販サイトをなんとなくみて「へ〜、栞か〜」と思っていたやつが、置いてある! 金ピカでもクリップでもない、ちゃんと栞でカラフルな、ブッコローと岡崎さんのYouTubeの図。文句なしで購入。

 

さらにそこからGoogleマップを見ながら歩いて〈蕪木〉へ。相変わらずやってるんだかやってないんだかわからない佇まい、扉の向こうからは珍しく似つかわしくない楽しげな話し声。小さな「営業中」の看板は出ていたのでダメ元で扉を押し開けると、まだやっていらした。やった〜。

確か路地で自生している木から豆を収穫していると聞いた覚えがあった「モカ・シェカ」と、カフェイン取りたくない時用に「デカフェ」を100gずつ。チョコレートも美味しいけれど、あまり食べないのでパス。ほくほくしながら浅草橋駅から帰路についた。

 

帰宅し、『台所をひらく』に載っている白央さんの汁ビーフンにトライしてみる。ビーフンとキクラゲを戻す手間はありつつも、基本具を鍋に入れて入れるだけというシンプルさ、そこはかとない、根拠は確認していないイメージとしてのヘルシーさに惹かれた。

ビーフンを初めて使うけれど、袋には4人前のレシピが「1袋」と書いてあるからどうにか割らないといけない。割ったは割ったけれど、ぱらぱらかけらが出る。これうまいこと割る方法あるんかしら?

かくして出来上がった初の汁ビーフン、めちゃくちゃ滋味深く美味しい。お酒の出汁割りのような、酒蒸しを彷彿とさせるような旨味。2〜3人前というレシピを1/2量にしてみたけれど、ビーフンはそれよりだいぶん少なめだったから汁が多めになってしまったのは反省点。めちゃ楽で美味しかったから、これも練習したいな〜。

 

昨日一昨日の鬱屈が嘘のように楽しく充実した一日だった。昔の人はこれを夢のお導きとか言って民話にするだろうか。いや、時間とお金はあるけれどどう遊べばいいか、なんて悩みが贅沢だったか。ともあれ、個人的には大変すっきり、しっかり自由に動いた一日だった。幸せを体に満たしたまま、ぐっすり眠る。